コラム・インタビュー

 第3回アカデミア創薬レジェンドトーク

Translational and Regulatory Sciences

TRSに掲載された国内向け研究論文(日本語論文)について

AMED感染症創薬産学官連絡会 | AMED Public and Private Partnerships for Infectious Diseases R&D

創薬ブースター 秋キャンペーンポスター・チラシ

コラム

求められる創薬ソリューションプロバイダーを目指して

みなさま、こんにちは。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)創薬支援推進事業において、イノベーションエンジンユニットを推進するAxcelead Drug Discovery Partners株式会社(以下Axcelead)の池浦です。Axceleadは、武田薬品工業株式会社(以下武田薬品工業)の創薬プラットフォーム事業を継承した創薬ソリューションプロバイダーとして2017年7月に事業をスタートしました。Axcelead は、日本で唯一、統合型創薬研究支援(IDD:Integrated Drug Discovery) サービスを提供しています。創薬に必要な機能が一つ屋根の下で密接に連携することで、お客様のニーズに合わせてカスタマイズしたサービスをパッケージとして提供しています。これを模式的に表したものが下図です。こうしてみると、各ステップにおいて複数の専門機能が連携し、創薬プロセスを構成していく有機的なネットワークをイメージしていただけると思います。


こうした創薬研究開発は、かつては個々の製薬会社が社内リソースを活用して推進することが主流でした。しかし、これまでのコラムで他の先生方もお話されているように、昨今、さまざまな分野で産官学の連携が求められており、創薬研究開発においても論を俟ちません。複数のプレーヤーが連携し、ときに複雑な研究開発体制になる中で、Axceleadはその橋渡しを行うことで、プレーヤーが一丸となって研究を展開していくことの原動力になりたいと願います。患者様への貢献を目指す創薬研究において、「選ばれ続けること」、そして、「架け橋となること」は、われわれAxceleadのVision 2025におけるキーワードでもあります。これには、創薬研究における確かな経験と技術に裏打ちされたAxcelead自身の研鑽の継続と共に、お互いを補完しうる新たなパートナーシップも有効であり欠かせません*

Axceleadの創薬力の強みのひとつに、低分子創薬があります。これは、武田薬品工業時代から研鑽を積み重ねた経験と技術を基盤とするものです。一般に、製造コストが低く、経口投与の可能性のある低分子創薬ですが、すでに徹底的に研究され尽くされ、その創薬ターゲットは枯渇していると評されたこともありました。また、生物製剤、細胞治療、遺伝子治療など、モダリティの多様化の時代を迎え、製薬企業の研究方針がシフトしてきた面もあります。しかし、こうした状況の中、新たな創薬モダリティと共に、低分子創薬の可能性は依然として重要であり、注目すべきだとわれわれは考えます。かつて低分子創薬のターゲットとなり得なかったものも、基礎研究の進展や技術革新により標的にすることが可能となってきました。例えば、RNAやタンパク質間相互作用を標的とする低分子化合物の可能性です。確かな低分子創薬の基盤の上で、新たな技術を駆使することやそれを可能とするパートナーシップを構築し協働することで、低分子創薬の可能性はまだまだ広がりを見せると考えます。

AMED創薬支援推進事業へのイノベーションエンジンユニットとしての参画

ここで、われわれのパートナーシップの活動が顕著に表れた取り組みのひとつとして、イノベーションエンジンユニットの活動を紹介させていただきます。2017年にわれわれが事業をスタートしてまもなく、AxceleadはAMED平成29年度 創薬支援推進事業―創薬シーズ実用化支援基盤整備事業―に採択されました。研究計画の立案から上述の模式図のあらゆる創薬ステージにあるプロジェクトに貢献しうるAxceleadのもつ強みとその可能性が評価されたものと考えます。実際に本事業においてAxceleadが推進するイノベーションエンジンユニットは、アカデミアの保有するシーズやコンセプトに対し、創薬コンサルテーションの提供や必要なデータの取得を実施してきました。昨年度、本AMED事業開始から2年半が経った折り返し地点において、Axceleadが携わった新規薬剤開発を目指すプロジェクトは計13件、従事したAxceleadメンバーは100名を大きく超えています。まさに上述の模式図のネットワークが活発に連動した結果が、この従事者数にも表れているのではと思います**

「試験計画段階からのコンサルテーションを通じて、依頼目的に最適な方法を提案することができた。」「データ報告時期の前倒しの希望に対して、アッセイ系のミニチュア化や代替法を導入することにより対応することができた。」「データ取得において、動態や薬効等の複数部門が協力し、ワンストップで創薬に必要な種々のサービスを提供するAxceleadならではの強みを活かすことができた。」「Axceleadの研究方針に信頼を置いていただくことで、スムーズなデータ取得ならびに研究の推進に結びつけることができた。」
これらは本事業に従事したAxceleadメンバーの声です。いずれのプロジェクトにおいても研究計画の立案段階から参画することで、Axceleadの強みを発揮する機会を得ました。もちろん各プロジェクトにおいては種々の課題が発生し、解決できたもの、あるいは必要と考えられるデータを取得した結果、No goの判断に至ったもの、結果はさまざまですが、その中でこうした声のひとつひとつは、Axceleadがパートナーである依頼者様と共に歩み成長していくことをわれわれが実感した瞬間でもありました。

Axceleadが事業を開始して早3年が経ち、その間に携わった依頼・プロジェクトのひとつひとつが、われわれの事業と描くVisionに確信を与えてくれます。創薬に携わる多くの方々から、Axceleadはいつも傍にいる頼れるパートナーと考えていただけるよう、われわれは統合型創薬研究支援を支える確かな経験と技術を磨き、発揮する機会をこれからも大切にして、患者様への貢献を目指すみなさまと共に歩みを進めてまいります。

*詳細は弊社ホームページ(https://www.axcelead.com/)をご参照ください。
**詳細は創薬支援推進事業 創薬シーズ実用化支援基盤整備事業 中間評価結果(https://www.amed.go.jp/content/000058820.pdf)をご参照ください。

2020年12月

アクセリードドラッグディスカバリーパートナーズ株式会社
代表取締役社長
 池浦 義典

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