コラム・インタビュー

第3回 Translational and Regulatory Sciences Symposium

Translational and Regulatory Sciences

コラム

アカデミア発創薬シーズの支援に携わって

 創薬支援推進ユニットの一つであるプロモーターユニット(PU)では,創薬支援ネットワークが支援するアカデミア発創薬シーズの非臨床試験について,試験受託機関(CRO)を探した後,決定したCROに試験を実施して頂く(モニターする)業務を行なっている.本来,この業務は影の存在であって表に出てくることはないと思うが,本コラムのスペースを頂いたので,我々が気を付けていることや拘っていることなどを述べてみたい.
 AMED iD3から,試験の検討依頼が来ると,まず,試験仕様書(依頼仕様書)を作成し,これを複数のCROに出して相見積りを取ることになるが,これが案外難しい.PUが取り扱う試験(「PUの試験」と略させて頂く)は公的資金を使用するため,公正な比較が必要となり,細かいことでも費用に関することは指定する必要がある.例えば,被験物質の調製方法一つを取っても,乳鉢を使って懸濁液を作るのと単純に溶液を作るのとでは費用が異なる.特に,1か月間投与する薬剤を用時調製するとなると費用が大きく変わってくる.そのため,依頼仕様書を作成する際は,想像力を膨らませて費用にかかわる事項を抽出する.因みに,PU担当者の殆どは製薬会社の出身者でその経験をメンバーで突き合わせてこの作業を実施している.当然のことながら,懸命に想像力を膨らませても及ばないことは必ずあり,不確定な試験内容が見積取得中に見つかった場合は,各CROから見積を出し直して貰うことになり,各CROには面倒をおかけしている.
依頼仕様書の作成の際は,同時に,試験スケジュールの一覧表も作成している.これは長期の毒性試験や治験実施計画書などに添付されている試験内容の一覧表のようなものだ.我々は「試験スケジュールの見える化」と呼んでいる.PUの試験では,登場人物が多く,アカデミアの研究主任者(PI),AMED担当者(PM),委託先CRO,及びPUの少なくとも4者が関与し,それぞれの考えていることを依頼仕様書や試験計画書のみで目線合わせするのは難しい.そのため「見える化」を作成する以前は,委託先決定後に,希望時期に試験が終了できないことが明らかになかったり,PIの意図していないタイミングで試料採取したりするようなトラブルが発生していた.しかし,現在は解消されている.ただし,これも上記の依頼仕様書と同様に,初案を作成するのにはかなりの想像力が必要なため,苦労している所である.
委託先CROが決定されるとそれ以降は,PUは試験をモニターするが,その際,創薬支援ネットワークが支援するプロジェクトの主目標である「企業への導出」を特に意識している.製薬会社が研究開発品を導入評価する際は,大量の試験報告書をPCの画面上で調査することが多いと思うが,試験報告書に要約が無かったり,あっても簡潔にまとまっていなかったりすると,導入評価に必要以上の時間を費やしてしまう.PCの画面では検索禁止になっていることも多く,時には試験報告書を初めから最後まで読まないと内容がわからないこともあり,複数の試験報告書を短時間に評価しなければならない評価者にとっては悪い印象が残ってしまうこともある.そこで,PUの試験においては,要約を必ず作成して頂き,当該要約により,その試験で実施された内容がすぐにわかるように簡潔な記載を心がけている.
また,導入対象の候補物質とは異なる被験物質を使用しているように見えたり,関連がわからなかったりすることも評価者を疲弊させるものだ.そこで,PUの試験においては,「被験物質A」「被験物質B」といった,その場限りの名称しか知らされないこともあるが,その際はPIが実験ノートに記載している被験物質の名称に変更して頂いたり,被験物質の由来を試験報告書に記載したりして,どの様な被験物質が使用されているのかトレースできるように工夫している.その他,データのグラフ化などにも細かい拘りがあるが記載スペースがなくなってしまった.
さて,PUが関与した試験が晴れて導出資料になった暁には,評価者が候補物質の評価のみに集中し,「この試験報告書はなってない」などと文句が出ないことを願うばかりである.

令和2年10月

株式会社LSIメディエンス
創薬支援事業本部 先端事業推進部

住近 浩

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