コラム・インタビュー

Translational and Regulatory Sciences

TRSに掲載された国内向け研究論文(日本語論文)について

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コラム

小さな創薬ベンチャーの大きなビジョン

カルナバイオサイエンスは、旧鐘紡株式会社の医薬品研究部門を起源とする創薬型バイオベンチャーです。1999年に、研究所を含む鐘紡の新薬部門(約650名)が、当時オランダで最大の製薬企業であったN.V.オルガノン社に売却されましたが、残念ながらN.V.オルガノン社のリストラ計画に伴い2003年に日本の研究所が閉鎖されることになりました。このとき、当時の研究所長であった吉野(現カルナバイオサイエンス代表取締役)が中心となってスピンアウトして創設されたのが、カルナバイオサイエンスです。カルナバイオサイエンスは、オルガノン研究所時代の経験を活かし、当時、非常にホットな創薬標的になりつつあったキナーゼを中心に業務を拡大し、2008年に上場を果たしました。その資金を基に、2010年に日本発の本格低分子創薬型ベンチャー企業をめざして創薬研究部門を設立し、現在は、画期的な医薬品の創出を目指して創薬研究も行っています。

創薬研究は、当初わずか化学2名から始まりましたが、現在では、化学、薬理、ターゲットバリデーション、薬物動態、臨床開発と順調に拡大し、約30名が創薬研究に従事しています。カルナバイオサイエンスの目指す姿は、真の創薬企業として、創薬標的の同定からヒット化合物の創出、リード最適化、臨床試験までを自社で実施できる企業、すなわちゼロから薬を生み出すことができるイノベーティブ企業であり、またその最終目標として、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患に対して画期的な治療薬を提供することにあります。創薬部門の設立から、わずか数年で、Johnson&Johnson社、Sierra Oncology社、Gilead Sciences社という世界的製薬企業に、当社が独自に創出したキナーゼ阻害剤を導出することができたという実績は、当社が目指す真の創薬企業に一歩近づいたと考えています。次のステップは、自社での臨床試験実施であり、その準備を着々と進めているところです。さらに近い将来には、当社が導出した化合物あるいは自社で臨床試験を実施した化合物が、いまだに有効な治療方法が見つかっていない病気に対する画期的な治療薬になり、世界中の患者様を救うことができればと考えています。

このように創薬企業は、まさにビジョナリーカンパニーであり、皆が常にミッション、ビジョンをもって日々の研究・業務に勤しんでいます。

カルナバイオサイエンスの行動基準の1つに「個性を尊重し、想像力を発揮する」とあり、「人財」を最も重要な経営資源と考えています。こうした理念のもと、これまでにない画期的な日本初の新薬を生み出し、人々の健康に貢献するとともに、日本の科学にも貢献したいと考えています。

令和元年10月

カルナバイオサイエンス株式会社
取締役・研究開発本部長

澤 匡明

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