コラム・インタビュー

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コラム

創薬の水先案内人を目指して

AMEDが2015年4月に設立されて3年が経過しました。医療研究を担うアカデミアの先生方や製薬企業の方々の中にはAMEDの名前やその役割をご存じの方が広がりつつあるように思いますが、患者さんや一般の方々への認知度はまだ高いとは言えません。そのような中で、「医療分野の研究成果を患者さんやそのご家族に一分一秒でも早く届けることが我々のミッションである。」理事長の末松はこの言葉でたびたび職員を鼓舞します。その意味するところは、我々の持つ機能は単なるfundingに留まらないという矜持、医療研究に対する実用化と時間軸という価値観、そして新たな治療法開発を待ち望む方々の期待に地道に応えていくという決意。これは、我々AMED職員が共有する、その果たすべき役割とspiritを端的に表すものです。

AMEDの支援事業には様々なものがありますが、その中でも、このサイトで情報提供している創薬支援ネットワークに関する事業には他の事業では見られないユニークな特徴があります。それは、AMEDの職員、創薬コーディネーターが研究者と伴走して実用化を目指すという点です。具体的には、アカデミアが行う研究に対し、創薬の観点から現時点でなすべき研究のアドバイス、有望なシーズを研究者からお預かりして他の研究開発法人や民間のリソースと連携協力しながら行うデータの収集と評価、知財戦略や企業導出の検討など、創薬のearly phaseにおけるその支援は多岐にわたります。このような支援過程において、我々は研究者の意に沿わないことを敢えて言わなければならないことがあります。それは、限りあるリソースの中で、我々が共有する判断軸「研究成果を患者さんやそのご家族に一分一秒でも早く届けること」に基づくものです。その際、我々はなぜそのように判断したのか、どのような対応方策が考えうるのかなどについて、個別に研究者へ丁寧にわかりやすく説明したいと思っており、私はこのディスカッションこそが創薬研究にとって重要なプロセスではないかと考えます。

一つの新薬は、10年以上の歳月をかけ、多くの方々の熱意と叡智を結集してようやく生み出されます。その長い航海の中で、有望なシーズが暗礁を避けながら少しでも早く患者さんの手元に届くようnavigateしたい。研究者と「共に考え、共に歩む」創薬の水先案内人として、創薬コーディネーターをはじめとする我々AMED職員は、これからもこの事業を通じて画期的新薬の創出に貢献していきたいと考えています。

平成30年8月

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
創薬戦略部長
 河野 典厚

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